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文章読本 ( 丸谷才一 )

 丸谷才一著「文章読本」を読んだ。
 文章随筆とも言うべき著者の思いが詰まった文章論。文章の扱い方、向き合い方が濃厚に解説された一冊。

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文章読本
丸谷 才一
中央公論社 1995-11

by G-Tools , 2010/09/04

 お気に入り度:★★★★

 本書に収録されている文章を操る術は、以下の12項目に分けて解説されている。

  1. 小説家と日本語
  2. 名文を読め
  3. ちよつと気取って書け
  4. 達意といふこと
  5. 新しい和漢混淆文
  6. 言葉の綾
  7. 言葉のゆかり
  8. イメージと論理
  9. 文体とレトリック
  10. 結構と脈絡
  11. 目と耳と頭に訴へる
  12. 現代文の条件

 目次を見て分かる通り、本書は歴史的仮名遣いによって表記されている。他にも、新字が気に入らなければ旧字を使用し、送り仮名は送りすぎないようにするなど、巻末に『わたしの表記法について』が記載されているが、わざわざ表記法の解説を入れるということは、そのこだわりを明らかにする意図もあるからで、著者の文章に対する向き合い方、考え方が感じ取れ、ひいては読者に文章への向き合い方の一例を示しているようにも思える。

 そのこだわりで綴られた本書は、文章の構成方法や書き方の解説というよりは、文章随筆や文章論という印象を受ける。
 本書を含め『名文を読め』という共通した結論に帰着している「三島由紀夫氏の文章読本」や「谷崎潤一郎氏の文章読本」は、その結論への術を、文章の構成と技法を体系的に解説しているのに対し、丸谷才一氏の文章読本では、文章の歴史、文章との向き合い方、考え方、捉え方を滔々と綴りながら解説している。
 だから手っ取り早く良い文章を書くための方法を知りたいという人には、回りくどく、読むのに疲れてしまうかも知れない。

 しかしそれも【第八章:イメージと論理】、【第九章:文体とレトリック】、【第十章:結構と脈絡】、【第十一章:目と耳と頭に打ったへる】、【第十二章:現代文の条件】あたりにくると変わってきて、特に【第九章:文体とレトリック】では、大岡昇平著「野火」を『ごく稀なくらゐレトリカルな、しかもすぐれてレトリカルな作品である』として、多くのレトリックの例文に「野火」の文章を引用し、濃厚なレトリック技法の解説が展開されている。

【第十二章:現代文の条件】では、普段我々がその解決方法に難渋する文末処理(る、だった、などで終わる文末のこと)について、豊富な過去の文語文に比べ、現代口語文の文末処理の乏しさに愚痴をこぼしながらも、さまざまな実例を引いて文末処理について考察して、かなり実用的な解説が展開されている。

 そうなると先の滔々と綴って、回りくどい印象は、懇切丁寧な印象に変わる。
 そのように印象が変わったところで、『名文を読め』という真意が、【第十二章:現代文の条件】の中に述べられている。
『われわれの言語生活とは借用の連続なのである』
『ものを語り、ものを書くに当たつて、型なしですませることなど、実は不可能なのだ』と述べたあとの言葉で、確かに慣用句はしばしば使われるものだし、なにか文章を書くとき、どこかで見かけた一文が頭に浮かんできたりする、このあたりのことを言っている。
 したがって名文をたくさん読んでいれば、文章を書くときに、それに合った文章が思い起こされ、名文が書ける、ということなのだろう。

 著者は、レトリックは言いまわしの型だとも述べており、ものを書くのに必要な型であるレトリックを一つの章で丁寧に解説し、レトリックが豊かな古典の例文が本書に多いのも頷ける。
 しかし、古典文のあまり読めない人には、解説があっても理解しづらい部分もあり、レトリカルな現代文を例文だったら、より分かり易かっただろう。

 そのあたりちょっと敷居が高さが感じられるものの、文章を語る著者の滑らかな解説そのものが、文章を学ぶ手本であるように感じた。
 本書は、腰を据えてじっくり何度も読むことで、文章の書き方が身体に染み込んでいく、そんな文章読本ではないだろうか。

photo
文章読本
三島 由紀夫
中央公論社 1995-12
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文章読本
谷崎 潤一郎
中央公論社 1996-02
by G-Tools , 2010/08/22
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ミステリー・サスペンス、ホラー、歴史人物、ユーモアなど幅広く読んでいます。

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