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ふたご ( 吉村達也 )

 吉村達也著「ふたご」を読んだ。
 まったく見分けがつかない完全同一体のふたご。双生児誕生の神秘を材にしたSFホラー。

ふたご (角川ホラー文庫)
ふたご
著者:吉村 達也
出版社:角川ホラー文庫
おすすめ度:
Amazon.co.jp で詳細を見る

 お気に入り度:★★

あらすじ

 俳優の安達真児は、中曽根麗奈の父の資産に目がくらみ、美しい妻唯李を殺害した。

 代理殺人によって犯人と疑われなかった真児は、唯李の父から、養子に出し海外にいるふたごの妹ユリは、姉と呼吸から心拍のリズムまで同期し、まったく見分けが付かない完全同一のふたごだと打ち明けられた。
 そして、ユリが真児と結婚したがっていること聞かされ、ユリと再婚して欲しいと告げられた。

 衝撃のままに帰宅した真児は、留守番電話に残された、殺したはずの妻『唯李』からのメッセージを聞いた。

感想

 双生児誕生の神秘を材にしたSFホラー作品。

 呼吸から心拍のリズムまで同期し、仕草や話し方まで同じで、まったく見分けが付かない完全同一体のふたご(パーフェクトツインズ)の存在が、この作品の中心となる。
 物語には、安達真児の感じる、殺した妻とまったく同一の双子の妹への底知れぬ不安と恐怖の他に、壮大な遺伝子の秘密が包蔵されている。

 全体的に感じられたのは、ホラー的要素の薄さ、物語のリアリティーのなさ、バランスの悪さである。
 遺伝学的にはありえない、パーフェクトツインズの存在の可能性に力を入れすぎれたために、物語を形作るはずの遺伝子の説明がなおざりとなって、物語のリアリティーが損なわれ、受け入れ難い違和感ができあがってしまった。

 パーフェクトツインズの解説は、安達真児の幼なじみで遺伝研究所主任の村田和正によってなされている。
 完全同一体の存在に恐怖した安達真児は、その存在の可能性を聞きに、遺伝を研究している村田の元を訪れた。
 初めは遺伝学的にあり得ないとしていた村田も、不死のガン細胞、植物の葉のように生命維持のために一部を切り落とす自殺細胞、卵巣嚢種の一種で歯や毛髪などを内包する皮様嚢種を考えたとき、パーフェクトツインズの存在が、極めて例外的にありうることに気が付いた。

 しかし彼の説明は、とにかく細かすぎて、とても素人の安達真児へ話しているようには思えない。
 さらにパーフェクトツインズの存在を確信するために訪れた唯李の父へ、パーフェクトツインズの可能性を説き、さらに飛躍し、人間は遺伝子という記号の集まり、人間の行動は遺伝子によって運命づけられていた、と説明を始める。

 パーフェクトツインズの存在肯定は、多くのページを費やし、物語の形作るはずの人間の行動と遺伝子を理屈だけで結びつけたため、どうしても異常な行動の登場人物に受け入れ難さが生まれてしまう。

 また完全同一のふたごが怖いのか?という疑問を持ったために、唯李の両親の驚き、安達真児の恐れなどに、わざとらしさを感じてしまったのが、ホラー的要素の薄さを感じた原因かもしれない。

 パーフェクトツインズの説明は読めば受け入れられるだけに、専門的な部分は省いて、物語を形作る遺伝子の説明に重点をおいても良かったのではないかと思う。
 この作品は、新しいジャンルに取り組むための習作的作品だと感じた。

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ミステリー・サスペンス、ホラー、歴史人物、ユーモアなど幅広く読んでいます。

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