忍者ブログ

Reading Books [ 書評・ブックレビュー ]

Home > 吉村達也 > 初恋

初恋 ( 吉村達也 )

 吉村達也著「初恋」を読んだ。
 十六年もの間思い続けた初恋の狂気が平凡な幸せを崩壊させる。

初恋 (角川ホラー文庫)
初恋
著者:吉村 達也
出版社:角川ホラー文庫
おすすめ度:
Amazon.co.jp で詳細を見る

 お気に入り度:★★★★

あらすじ

 容姿や出世の速度、何につけても平均的な三宅靖は、幸せも中くらいが一番良いを思っている。
 四年前に結婚した妻も、美人ではなかったが、控えめで化粧気も少なく、眩しい笑顔が魅力だ。
 三宅は、家事を面倒がらずにこなす健気な妻に満足していたし、三十五年ローンで購入した一戸建てのマイホームにも満足していた。

 そんな三宅の幸せを崩壊させる出来事が起きた。
 外回りから帰ってきた昼下がり、見知らぬ人物から弁当が届けられていた。
 気味悪さを感じる三宅にかかってきた電話は、広畑克江と名乗る知らない人物からである。
 弁当の味を聞き、作るのにどんなに苦労したかを、一方的に話し始めた彼女。
 大きく引き延ばした三宅の写真を飾り、その前で裸で寝ると言った彼女。
 広畑克江は、十六年前、中学二年の時に告白してきて、三宅が軽い気持ちでキスした相手だった。

感想

 霊現象によるホラーではなく、狂的病的思考の人物が起こすサスペンスホラー。

 とにかく広畑克江の異常な人物描写を読んで欲しい。怖さを通り越して笑いさえ込み上げてくる。
 とくに『ラジオ電話人生相談』に出演した克江の狂乱ぶりは凄まじく、彼女の異常さをトコトン描いている。

「彼と再会したから恋が再燃したのではないか。十六年もの間、彼のことを思い続けたのは眉唾だ」

 と辛辣に言った相談相手のパーソナリティーに対して、今まで大人しく自分の思いの丈を一方的に相談していた克江が、

「なんですってぇー!」

 と悲鳴に近い声をあげ、キリキリと歯ぎしりを始め、ウルルルルと頬を震わせながら唸るのである。
 少々オーバーな感じがしないでもないが、なぜか彼女の様子に引き込まれる。
 どうやら彼女の異常な人間性に興味を持ってしまったようで、これから何をしでかすのだろうという好奇心が生まれていた。

 以降、初恋に対して異常な執着心と、潔癖な理屈を持つ彼女の行動はエスカレートして、平凡だが幸せな三宅の生活を崩壊させていく。
 しかしストーカーの起こす事件を描いたと言うには何かが違う。
 異常でどこかユーモラスな人間性がクローズアップされた、広畑克江が主人公のホラー小説のように思えた。

 結末に、もうひと山欲しいと思うのは、突然現れた異常な女に怯え怒り振り回される三宅と、彼を手玉に取る克江の起こす騒動が、ジェットコー
 スターのように次々と訪れるスリルとサスペンスに満ちているからだろう。

スポンサード リンク

コメント

突然の告白!
共感していただいて恐縮です……
toku@管理人 2010/03/13 ( 土 ) 19:26:19
この寸評、秀逸です。

最近、家内に不倫がばれて、
とことん、しばかれていますのて、共感できました。
ada 2010/03/13 ( 土 ) 08:10:44
※本サイトと関連のない内容のサイトのURLが入力され、宣伝行為と判断した場合、コメントを削除することがあります。
名前
サイト(任意)
コメント
※コメント欄に表示されている文は認証ワードになっていますので、削除せずにそのままコメントをご記入ください。

ページトップへ

プロフィール

profile
HN:yososuzume
星新一と藤沢周平中毒者。
ミステリー・サスペンス、ホラー、歴史人物、ユーモアなど幅広く読んでいます。

Twitter:@yososuzumeをフォロー

mail

PR

アーカイブ

ブログランキング

  • 人気ブログランキングへ
  • にほんブログ村 本ブログへ
  • にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
  • にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
  • にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ
  • blogram投票ボタン
  • 池波正太郎
  • 藤沢周平作品を語ろう
  • 本好きPeople

Copyright c2008 Reading Books All Rights Reserved
忍者ブログ [PR]