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文通 ( 吉村達也 )

 吉村達也著「文通」を読んだ。
 文通相手募集の投稿から始まる恐怖。公開された住所と氏名。後悔しても……もう遅い。

文通 (角川ホラー文庫)
文通
著者:吉村 達也
出版社:角川ホラー文庫
おすすめ度:
Amazon.co.jp で詳細を見る

 お気に入り度:★★★

あらすじ

 茅ヶ崎に住む高校二年の片桐瑞穂は、新しい本を物色しに出かけた本屋で、文通専門雑誌に目を留めた。
 少々時代がかった雑誌だったが、奇妙な魅力に取り憑かれて購入し、文通相手募集の投稿をした。

 やがて届いた四通の手紙。どれも気の重くなるものばかり。
 しかし、21才の青年から届いた手紙は、文通に慣れ気配りが行き届き、内容も気軽に文通を楽しめそうなものだった。
 瑞穂は他の三人に文通を断る手紙を出した。

 ところが断ったはずの、45才の女性から一通の手紙が届いた。
 そこには文通の断りには触れず、瑞穂の住む茅ヶ崎にまでやってきた内容が一方的に綴られていた。

感想

初恋』同様、人間の怖さを描いたホラー小説。

 まず、本書を購入した場合、裏表紙の概説は見ない方がいい。
 物語はミステリー色の強い構成となっているのだが、概説でネタバレされてしまっているので、本書を面白さが損なわれてしまう。

 インターネットが普及する以前の作品(1994年初版)なので、それが分かっていると、文通が題材でも違和感はない。
 むしろ文通だからこそ描ける、住所氏名を不特定多数に公開してしまう恐怖が綴られている。
 インターネットによって匿名での交流が可能となった今、自分の住所氏名が公に出てしまうことの怖さは、現在の人々が一番良く分かっているのではないだろうか。

 物語は、気の重くなる文通希望者からの手紙に、文通を断る返信したことから進展する。
 恐れていた45才女性の山下二三恵から返事が届いた。
 礼儀をわきまえ、下手に出ているこの手紙の主は、侮辱されたと思ったら、態度を豹変して怒り出す恐れがあった。
 しかしその内容は、その恐れ以上に怖いものだった。
 断りの内容には触れず、長野から茅ヶ崎まで自転車でやってきた、と書かれ、茅ヶ崎の様子、瑞穂の家の様子などが綴られ、瑞穂は相手の異常性と身に迫る恐怖を感じる。

 実はこの恐怖は、ほんの始まりに過ぎず、このあと思いもよらない展開が用意されており、ミステリー要素に満ちた作品になっている。
 その展開の一部が本書裏表紙の概説に書かれているので、見ない方がいい、と前述した。

 先の展開を期待させる構成には、ぐいぐい引き込まれていくものの、物足りないと思う点もある。
 一つは、恐怖の原因付けが、しっくりせず、弱いこと。
 瑞穂に迫る恐怖の原因は説明されているが、受け入れるには、どこか弱く描き足りていない。

 もう一つは、結末がホラーから逃げてしまったこと。
 クライマックスに迫り、これからどんな展開が、と期待していたところで、ホラーから逃げてしまった結末となり、肩すかしを食らった印象を受けた。
 消化不良になる読者も多いのではないだろうか。

 この吉村達也氏のホラー二作目は、初作品『初恋』の出来が良かっただけに、残念に思った。

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ミステリー・サスペンス、ホラー、歴史人物、ユーモアなど幅広く読んでいます。

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