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サウスバウンド ( 奥田英朗 )

 奥田英朗著「サウスバウンド」を読んだ。
 現代日本人の不満を代弁した痛快小説。

サウスバウンド 上
サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)
おすすめ度:
サウスバウンド 下
サウスバウンド 下 (角川文庫 お 56-2)
おすすめ度:
著者:奥田 英朗
出版社:角川文庫
出版日:2007-8
powered by a4t.jp

 お気に入り度:★★★★★

あらすじ

『第一部(上巻)』
 小学六年の上原二郎は、学校帰りに友達と寄り道をしたりする普通の小学生だったが、悩みの種は父・一郎だった。
 いつも家でごろごろしているし、学校には行かなくてもいいと言い、国民年金の納付督促にきた役人には国民をやめたと宣言する始末。
 果ては修学旅行の費用が高いからと明細の開示を求め学校に乗り込むが、警察に連れて行かれ国家の犬と罵倒するという、元過激派の父。

 悩み事は他にもあった。
 二郎と同級生の淳に目を付けて、金を要求する不良中学生のカツ。その子分で同級生の黒木。
 不倫しているらしい姉。そしてカツに言われた母の過去。

 悩みが増える中、二郎は父の知り合いで、最近居候となったアキラおじさんにある事を頼まれた。
 カツへの仕返しを交換条件にした頼まれ事は、大事件に発展してアキラおじさんは警察に捕まった。
 家には家宅捜索に来た警察、元同士だった過激派たち、マスコミが詰めかけ、過激派ともみ合いになった父は警察に連れて行かれてしまった。
 世間を騒がせた事件により貸家の契約延長を断られて、二郎は両親と妹・桃子とともに西表島へ移り住むことになった。
 しかし母は完全に開き直っていた。

『第二部(下巻)』
 アキラおじさんに教えてもらった元過激派だったという母は、西表島に来てから父と恋人同士のようになり、若返った。
 西表島の家は、父の祖父・ガンジンが恩人だというサンラーという老人に世話をしてもらった。
 水道も電気もない大自然に囲まれた家で、二郎は少々不満はあったが、皆が助け合っている土地で島に住む子供たちと仲良くなり、家族に平穏が訪れていた。

 しかし、それもつかの間、家族が住んでいた土地はリゾート開発業者のものとなっていた。
 立ち退きを要求する業者に対し、父は資本家の手先と罵り、徹底抗戦の構えを見せた。
 元過激派の父を見方に引き入れようとした自然保護の市民運動家グループが関わったことで、マスコミ、普天間基地で一騒動起こすのではないかと目を光らせる公安、リゾート開発業者に土地を売った町議であり土木業者の座間が加わり、大騒動へ発展していく。

感想

 まず、この内容をよくこのボリュームに収めたなという印象を持った。
 それだけに無駄な部分はなく、本の厚さ以上に読み応えがある。
 本書の読みどころは全部といっていいほどで、豪快で骨太な父の言動がハチャメチャな雰囲気を作り、随所に盛り込まれたユーモアが、重くなりがちな内容に明るさを与えている。

 一応、主人公は二郎だが、物語の世界を作っているのは紛れもなく元過激派の父・一郎で、二郎はそれを客観的に見つめる役目を負っている。
 父や二郎だけでなく、それ以外のキャラクターも濃厚で、生き生きと動き回る彼らはとても魅力的。
 そしてストーリーの多彩さによって、物語は濃度を増して読者をぐいぐい引き込む。
 特に物語の始めにある、父が国民年金督促の役人を無茶苦茶とも思える論理で論破するシーンによって、なんだかとんでもなく面白そうな話が待ってそうだと、物語の世界へ一気に引き込まれる。

 第一部(上巻)は、破天荒で変わった考えを持つ父・一郎への悩み、目をつけられた不良との対決、いないと思っていた祖父と祖母の存在、同級生の女の子との淡い関係など、二郎の青春ストーリーとしても読める。
 そして国や資本主義を徹底的に嫌う一郎の骨太な姿勢を描き、それらを当たり前だと信じ従属するものたちへの手厳しい考えには、一部共感すら持ってしまう。

 第二部(下巻)は、舞台を西表島に移す。
 琉球王国からの搾取に反抗し、八重山のために戦ったアカハチと、移り住んだ土地から追い出そうとするリゾート開発業者との一郎の闘いを対照的に描いている。
 第一部では変わり者扱いだった一郎は、アカハチの子孫ということで島の住人から好意の目を向けられて、どこかヒーロー的な存在。
 そして二郎は、相変わらず変わった言動をしている父に困りながらも、畑を耕したり漁に出たりなど精力的に働きだした姿に見直し、受け入れ始める。
 また吹っ切れた母や、島に突然やってきた姉の変わり様によって、二郎と桃子がどこか逞しくなったように感じるのも面白い。

 島の子供たち、突然島にやってきて母同様吹っ切れてしまっている姉、姉に一目惚れした新米警官、キャンプ場に住み着いている怪しい外国人などの活躍と、命を持って動き出す彼らが物語をより賑やかな雰囲気を作り出している。

 ところで、父・一郎の言動は一見過激で滅茶苦茶なようだけど、この本を読み終えるとスッキリするのはなぜだろう。
 もしかしたら元過激派の父を通して、今の日本の矛盾や不満を描き、我々に変わってそれに抵抗しているからなのかもしれない。

 映画「サウスバウンド」の感想はこちら

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星新一と藤沢周平中毒者。
ミステリー・サスペンス、ホラー、歴史人物、ユーモアなど幅広く読んでいます。

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