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町長選挙 ( 奥田英朗 )

 奥田英朗著「町長選挙」を読んだ。
 大きく触れた振り子が戻ってきた作品。反対に触れる振り子に期待。
 トンデモ精神科医・伊良部一郎が活躍するシリーズ第三弾。

町長選挙
町長選挙
奥田 英朗
文藝春秋 2009-03-10

by G-Tools , 2011/02/01

 お気に入り度:★★★

 はじめの二話『オーナー』、『アンポンマン』を読んで、まずネタ切れしている印象を受けた。
『オーナー』はあのナベツネをモデルだし、『アンポンマン』はホリエモン。
『町長選挙』は徳之島が舞台のモデルかな。
 彼らを取り巻く状況も、実際にニュースで聞いたことのあるものだから、物語の展開が少々面白みに欠ける。

 つづく『カリスマ稼業』は、中途半端な終わり方という印象を受け、『町長選挙』では伊良部のアホっぷりとそれに匹敵する島民たちの異常な町長選挙戦を描いているだけのような気もする。

 これまでのシリーズ「インザプール」「空中ブランコ」は、妙な症状に悩む患者の滑稽な姿と、治療とも思えない方法で結果的に患者を治してしまう常識外れの伊良部にスポットライトが当てられていたという印象で、この二人の漫才のようでもある絡み合いが魅力である。

 しかし本作品では、彼らを取り巻く環境や状況にも光が当てられているようで、目を向けるべき二人は少し目立たなくなってしまっている感じがする。
 特に『町長選挙』では、島民たちのすさまじい町長選挙戦にどうしても目が奪われがちであり、患者というか主人公は町長選二派に挟まれて内臓の調子が悪くなる程度。伊良部はアホさ加減をいつもの調子でやっているだけで、魅力的?だった治療が行われない。

 と、読み終えると違う見方もできるなと思いついた。
 反目し合っていた二派の町長候補と支持者たちは、伊良部の一言で島を愛する住人たちと変わり、これまで金にまみれていた彼らが、伊良部によって浄化(治療)されたのではないか。
 ちょっと譲りすぎかもしれないが、新たな伊良部の誕生と思えなくもない。

 ところで、ときどき見かける帯などの『誇大広告』に騙されることがよくある。
 本書もそれに近い帯と裏表紙の概説を持っていて、『伊良部がひきこもりに』などと、本書の大テーマのように仰々しく書いてあるものの、実際は引きこもっているというより、現実から逃げるため部屋に一時閉じこもってしまった程度。マユミちゃんの秘策によって、すぐに部屋から出てくるのである。
『伊良部が何週間も部屋に閉じこもりきり』というイメージを抱いていただけに、残念で帯には腹が立った。

 本書は、これまでの作品のインパクトが強すぎて、その第三弾たるや!という期待が大き過ぎたためボロクソに書いたが、まったく面白くない訳ではない。笑えるところはある。ただそれが弱くなっただけ。
 きっとこれまで大きく振れていた振り子が、ニュートラルな位置に戻ってきたのだと思う。
 これを過ぎれば、今度は、反対側に振り子が大きく……と期待しよう。

イン・ザ・プール
イン・ザ・プール
空中ブランコ
空中ブランコ
町長選挙
町長選挙
奥田 英朗
 文春文庫
by G-Tools , 2011/02/01
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