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クロスファイア ( 宮部みゆき )

 宮部みゆき著「クロスファイア」を読んだ。
 異能の力を持った苦悩や生き方を模索する主人公と、暖かい余韻を伴った読後感が魅力の作品。

クロスファイア(上)
クロスファイア(上) (光文社文庫)
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クロスファイア(下)
クロスファイア(下) (光文社文庫)
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クロスファイア [DVD]
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著者:宮部 みゆき
出版社:光文社
出版日:2002-09-10
監督:金子修介
出演:矢田亜希子 伊藤英明 吉沢悠
リリース:2001-01-25
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※2010/2/15:追記訂正

「クロスファイア 上」裏表紙から

 四人の若者が廃工場に瀕死の男を運び込んできた。その男を始末するために。
 目撃した青木淳子は、念力放火能力を放ち、三人の若者を炎上させる。しかし、残る一人の若者は逃走。淳子は、息絶えた男に誓う。「必ず、仇はとってあげるからね」
 一方、現場を訪れた石津ちか子刑事は、不可解な焼殺の手口から、ある事件を思い出していた!

 念力で対象物に火をつける能力を持った青木淳子を主人公とした小説。
 超能力を持つ女性が主人公だが、超能力をメインにあつかったものではなく、他の宮部作品同様、生き生きと動く登場人物たちの苦悩や喜び、悲しみを描き、期待感に溢れるストーリー展開と、暖かい余韻を伴った読後感が魅力の作品である。

 この作品には元となった短編小説「燔祭(『鳩笛草』に収録)」がある。
 燔祭は、多田一樹との出会いと恋、能力での仇討ちによって、能力を持たない人間との擦れ違い、念力放火能力を持つ主人公の苦悩と生き方を描いている。その結末は、孤独で寂しい。

 本作「クロスファイア」は、「燔祭」の生き方に対する一つの回答が描かれている。
 迷いながらも能力を持った意味と使途に答えを出し、自分を『装填された銃』として、青木淳子は殺人し続ける若者の処刑を始めた。
 悲壮の決意で闘いの道を選んだ青木淳子の姿は、使命感に燃えながらも孤独を感じさせる。
 しかし同じ能力を持つ仲間との出会いは、彼女を孤独から解放し、ひとときの幸せと居場所を与えた。

 その結末は、悲しく切ないものではあるが、能力に翻弄されてきたことを考えるとハッピーエンドに近いものを感じた。
 宮部作品の中でも、特にしばらく余韻に浸ることができる読後感を持つ、五指に入る作品だ。

 ところで主人公は、『人から必要とされる』ことに幸せを感じた能動的な性格であった。
 彼女を思い心配する人がいても、壁を作り受け入れなかった。
 もし彼女が『人を必要とする』受動的な性格ならば、少なくとも孤独ではなかったのではないだろうか。
 この作品の暖かい余韻を残す読後感は、エピローグに登場する彼女を思う人たちによって作り出されている。

 幼い青木淳子に弟を殺されたが、青木淳子に哀れみを感じている牧原刑事。
 妹を殺されてその復讐を手伝ってあげるという青木淳子に好意を寄せる多田。
 人を操る能力を持ち、青木淳子と親しい関係になる木戸。
 これらの人物が特に青木淳子に関わっていくことで、それぞれの彼女への思いを描き、より主人公をクローズアップしている。
 彼女は自分から孤独になろうとしていたが、読み終えると彼女は孤独ではなかった(本人の気持ちとは別に)と思う。

 最後は青木淳子は死んでしまい悲しい最後ではあるが、解説にもあるように自分もある意味ハッピーエンドではないかと思う。

 解説では「クロスファイア」の元となった「燔祭」の《「わたし、間違ってないもの。きっとどこかに、分かってくれる人がいる。わたしのこと、必要としてくれる人が」》を引用し、多田一樹では駄目で、分かってくれる人必要としてくれる人として木戸をあげ、彼と巡り会ったことでハッピーエンドとしている。
 ハッピーエンドの意味は解説とは違うが、やっと自分の能力から解放され自由になったという意味でハッピーエンドだと思う。
 個人的には超能力を持ったが故に孤独で寂しい木戸と巡り会えたが、心を捨て誰にも心を許さない、心なんか持ってちゃいけないという木戸に、最終的に淳子は間違いだったと気付く。
 そして最後も孤独なまま死んでいくが、自分の能力から解放され自由になる。

 青木淳子が死んで終わらないのが宮部作品のいいところで、その後を書くことで読者をスッキリさせ、うまく余韻を残していくフェードアウト的な状況を作っていると思う。
 最後は青木淳子が、同じ念力放火能力を持ち「妹」と感じ心配していた倉田かおりと石津刑事が青木淳子の部屋を訪れるが、「泣いていたのね」と青木淳子の心を読む。
 そして伊藤信恵が青木淳子の死を悼んで花を持ってきて、倉田かおりを妹かと聞き、倉田かおりは「うん、そうよ」と答える。
 これで青木淳子を孤独の死から救い、青木淳子への余韻を残して終わる。


 この本を読んだ後、もう一度映画「クロスファイア」を見た。
 前半から中盤は小説にほぼ沿っており、クライマックス付近では小説とは変わってくるが見ていて違和感をそれほど感じない。
 文庫本2冊を約2時間に詰め込んでいるので若干あっさりと話が進んでいく感じはするが、説明不足な感じはないし小説を読んだ後でも楽しんで見ることができた。
 同じく映画になった「模倣犯」は酷いできだったが、それと比べると雲泥の差だと思う。
 ちょっと残念だったのが「ガーディアン」。映画では長谷川部長の私的犯罪組織的な小さな組織にしか感じられなかった。
 そして小説では超能力を持ってしまった人間として青木淳子を描いているが、映画では超能力者としての青木淳子を描いているような印象を持ち、少し残念に思った。
 それにしても13歳の長澤まさみが初々しかった。

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