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山桜 [映画] ( 映画 )

 藤沢周平原作の映画「山桜」を見た。
 原作は「時雨みち」に収録されている「山桜」

山桜 [DVD]
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監督:篠原哲雄
出演:田中麗奈 篠田三郎 檀 ふみ 東山紀之 北条隆博
リリース:2008-12-24
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 お気に入り度:★★★★

あらすじ

 浦井野江は夫に先立たれた後、磯村家に嫁いだ。磯村家は禄こそ浦井家より低いが、金貸しをするなど金に執着する家だった。姑は意地が悪く、夫は野江の前夫を罵る嫌らしい人物で、野江は辛い日々を耐えていた。
 ある日野江は実家に帰る途中で、山桜を見かけた。一枝採ろうとしたが手が届かず、通りがかりの武士が一枝折ってくれた。
 その武士は、以前野江に婚姻を申し込んだが、叶うことがなかった手塚弥一郎だった。辛い日々の中で出会った手塚の凛々しさと穏やかさが野江の心に染み入る。

 この頃、藩政は逼迫していた。藩の重臣・諏訪平右衛門は藩政改革と称し、新田開発を農民に課し、さらに不作の年にもかかわらず年貢を上げた。無謀な改革にも異を唱える者はおらず、農民の暮らしは困窮を極めていた。
 郷方見廻りだった手塚弥一郎は、農民の貧困を目の当たりにしており、とうとう農民貧苦の元凶である諏訪平右衛門を斬った。
 牢に入れられ切腹必至と夫に告げられた野江は衝撃を受ける。

感想

 今まで見てきた藤沢作品の中でもっとも好ましく感じられた作品。
 映画を見ていて、藤沢周平の小説の一節が浮かんでくるようで、とても安心して見ることができた。
 原作はまだ読んだことがないが、映画「山桜」公式サイトの「藤沢周平の世界-山桜を語る-」に藤沢氏の長女・遠藤展子氏のコメントがある。

「山桜」は約二十ページの短篇です。映画にするには短い作品です。
 映画化に際してプロデューサーの小滝氏は「原作が一番大事です。そうでなくては、原作のあるものを映画化する意味がない」と言って下さいました。

 このようなプロデューサーの信念の元に作られた映画だからこそ、映画を見ていて小説の一節が浮かんでくるように感じたのだと思う。

 本作品で特に印象に残ったシーンがある。
 野江が桜の枝を手塚に折ってもらい、実家に持ち帰った桜の枝を見ながら、母と以前結婚の話があった手塚のことを話している。
 ここで、母が桜の枝と野江に目をやり、厳しい口調で『その枝はお切りなさい、その方がすっきりします』と言うシーン。
 手塚を気にかけだした野江の気持ちを断ち切らせるために言った母の気持ちが仕草と口調に表れ、檀ふみの演技と本作品の象徴的なものである山桜を使った比喩によって、とても強く印象づけられた。

 手塚の処分については明確な描写はなかったものの、厳しい冬を越し、春が訪れたことを知らせる場面が挿入されることによって、やっと自分の居場所を見つけた野江が幸せになれるであろう結末を想像させ、この直接的でない表現は柔らかくて好ましいものだった。

 本作品で少し残念だったのが、ラストシーンからエンディングにかけて流れる一青窈の主題歌。
 せっかく時代物のしっとりとした雰囲気と、野江の遠回りしたがやっと自分の居場所を見つけたという仄かな安らぎで締めくくられる場面が、この主題歌が挿入されることによって、映画の世界からはじき出され、現代に引き戻されてしまったような印象を受けた。

 2009/12/03追記
原作『山桜』のちょっとした感想を公開しました。

時雨みち (新潮文庫)
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著者:藤沢 周平
出版社:新潮社
出版日:1984-05
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星新一と藤沢周平中毒者。
ミステリー・サスペンス、ホラー、歴史人物、ユーモアなど幅広く読んでいます。

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