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推理小説作法―あなたもきっと書きたくなる ( 松本清張 )

 江戸川乱歩・松本清張共編「推理小説作法―あなたもきっと書きたくなる」(光文社文庫)を読んだ。
 推理小説に限らず、あらゆる場面でアイデア発想の参考になる一冊。

推理小説作法―あなたもきっと書きたくなる
推理小説作法―あなたもきっと書きたくなる
江戸川 乱歩・松本清張共編
光文社文庫 2005-08

by G-Tools , 2010/11/01

 お気に入り度:★★★★

 本書「推理小説作法―あなたもきっと書きたくなる」は、書籍名から想像されるようなHOW TO本ではない。あとがきで松本清張氏が述べているように、創作の『参考』としてつくられたもので、推理小説に対する考えや発想法、トリック、動機の重要性など、推理小説家の流儀をまとめた内容となっている。
 本書の良さは、本書の目的である『参考書』の面だけでなく、アイデアの発想法にあると感じた。推理小説家たちの新しいアイデアを得るための努力は、推理小説に限らず、多くの場面でアイデアを生み出すためのヒントになるだろう。特に松本清張氏の【推理小説の発想】は興味深く読むことができた。

 ところで本書は、昭和三十四年に刊行された書籍にもかかわらず、古さを感じさせない。そして、何人かの作家が発表した推理小説に関する著作を、江戸川乱歩氏と松本清張氏が編集しているので、推理小説に対しての様々な意見がバランス良く掲載されている作品だと感じた。

推理小説の歴史:中島河太郎

 推理小説という名称の発生から、各作家の作品を紹介すると共に、その色彩の変遷を紹介。
 推理小説史といった内容。

トリックの話:江戸川乱歩

 江戸川乱歩氏が作成した『類別トリック集成』を基本に、さまざまなトリック例を紹介、解説し、着想点について考察する。
 小説に限らずさまざまな着想のヒントとなる。常識に囚われず、物事を多角的に見ることが大切だと気づかされる。

動機の心理:大内茂男

 謎解きを中心とした推理小説と、文学性を内包した推理小説、両者の価値を認め、その一つの差異である動機の心理のあり方、動機の心理が推理小説にもたらすリアリティについて考察している。
 さまざまな小説を読んでいて、何となく受け入れきれない作品がときどきあるが、それはリアリティに欠ける面があるからだろうと考えさせられる。あとで紹介する、社会的動機を推理小説に取り入れることに成功した松本清張氏の【推理小説の発想】を続けて読むと、より面白い。
 今後、技術面からの視点でも読書を楽しめるだろう。

素人探偵誕生記:加田伶太郎

 探偵小説好き私大教師の探偵小説執筆記。いわゆる作者の打ち明け話。
 素人が試行錯誤して探偵小説を執筆する様子は、これから探偵小説を書いてみたいと思う人の参考になる。

推理小説のエチケット:荒正人

 作者と読者の知恵比べ、謎解きを中心とする探偵小説の基本精神はフェアプレイである。そのフェアプレイを行うための作法と、理想の探偵小説の守るべき点を十項目に分けて解説する。
 探偵小説を執筆する際の具体的な指標となる内容。

現場の鑑識:平島侃一

 医学博士による、殺人現場における鑑識方法を網羅した、殺人がからむ推理小説には欠かせない資料。死体の変化から死因の特定まで表や図を入れて解説されている。

推理小説とスリラー映画:植草甚一

 推理小説とスリラー映画の関係、およびその変化を語る。

推理小説の発想:松本清張

 自身の発想法やメモの取り方、推理小説に社会的動機を取り入れた理由、リアリティの出し方などを紹介し、創作ノートを公開している。松本清張氏の発想法は、小説に限らず、あらゆる場面でのアイデア創出の参考になるだろう。

【推理小説の発想】は、推理小説家の発想や思考に対する好奇心から、一番関心を持って読んだ内容で、特に
『トリックとかアイデアは、むしろボンヤリしているようなときに浮かんでくる。それは実は身の回りから浮かぶものが大部分』
 と述べられていることは興味深かった。降って湧いたようなアイデアでも、無からの発想でなく、身の回りの出来事が発想の種になっているという事実は、アイデア創出に悩む人のヒントになるのではないだろうか。

 そして、その身の回りの出来事や、思い浮かんではすぐに消えてしまうアイデアを蓄積するのが、
『思いついたこと、人から聞いたこと、思い浮かんだヒントをそのまま記す』
 という創作ノート。このメモは、どの作品になったのかが記されているのが新鮮である。
『メモは寝かせて、しばらく時間をおいてから見ると客観的になれる』
 と述べている創作ノートの活用法は、意外と多くの人がやっていると思う。実際、私が書評を書いてネット上に公開するときも、一日二日寝かせてから再読、修正することを行っている。

 他にも、作り話であればあるほど、地味な表現、抑えた文章がリアリティの面で効果的、など興味深い記述が多い。

 * * *
 あとがきに、構成とか文章についての考察、名作の解剖などを詳しくした技巧論として「続推理小説作法」をやってみたいと述べているが、それが世に出なかったことは残念だ。

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星新一と藤沢周平中毒者。
ミステリー・サスペンス、ホラー、歴史人物、ユーモアなど幅広く読んでいます。

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