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忍びの風 ( 池波正太郎 )

 池波正太郎著「忍びの風」を読んだ。
 信長暗殺に執念を燃やすお蝶と命を賭けて闘う忍びの空しさ。
蝶の戦記」に続き、甲賀忍びお蝶が登場する物語。

忍びの風〈1〉
忍びの風〈1〉 (文春文庫)
おすすめ度:
忍びの風〈2〉
忍びの風〈2〉 (文春文庫)
おすすめ度:
忍びの風〈3〉
忍びの風〈3〉 (文春文庫)
著者:池波正太郎
出版社:文春文庫
出版日:2003-02
powered by a4t.jp

 お気に入り度:★★★★

蝶の戦記」では、姉川の合戦の八年後、打倒信長のために再び上杉家に現れた甲賀・杉谷忍びのお蝶が、謙信の死によって希望を打ち砕かれ、失意のうちに上杉を去るところまでを描いていた。

 本書「忍びの風」では、甲賀・伴忍びの井笠半四郎を主人公、お蝶を半四郎の人生に多大な影響をあたえる準主役としている。
 時代は、長柄足軽として半四郎が参加している徳川軍・小笠原長忠隊が姉川の合戦を目前に控えている場面から、本能寺の変によって信長父子が死に、天下が秀吉と家康が勢力を争う情況になるまでを描いている。

あらすじ

 武田家のために忍び働きをしている甲賀・伴忍びの井笠半四郎は、徳川軍小笠原長忠の長柄足軽部隊の一人として姉川の合戦を目前に控えていた。
 その合戦間近の戦場において半四郎は、以前自分を男にした甲賀の杉谷忍び・お蝶と出会い、その翌日、姉川で闘いの火ぶたが切られた。
 お蝶と杉谷忍びは浅井のために働いており、闘いの最中、信長奇襲のため織田本陣近くで爆発を起こしたが失敗し、杉谷忍びは滅んでしまった。

 半四郎の属する伴忍びは、姉川の合戦後、織田の天下がくると見た山中忍びと以前のように手を組み、織田のために働くことになった。
 しかしそのことを知らない半四郎は依然徳川方の兵として潜んでいたが、お蝶を助けるためとはいえ、山中忍びを殺してしまった。
 伴忍びへ戻れなくなった半四郎は、お蝶と肌を合わせていたことも手伝って、お蝶が憎む、彼女の初恋の相手・善住房を火あぶり刑に処した信長の暗殺に手を貸すことを決意し、決死の死闘を演じる。
 しかしお蝶のため伴忍びを裏切った半四郎は、再び女忍び故の情に動くお蝶によって振り回されてしまう。

 時代は急激に変化し、明智謀反によって信長父子が死に、やがて天下は秀吉と家康の二大勢力にかたまった頃、天下の情勢を見極めて有力な大名たちのために命を賭けて働いてきた忍びたちの成したこととは。

感想

 前作「蝶の戦記」では、古い体制に固執し、滅びの道を歩んでいった大名や忍びたちの姿が描かれていた。
 今作「忍びの風」では、天下を握るであろう大名を見極め、力を貸し、新しい時代のために働く忍びたちを描き、激しく移り変わる時代に合わせて変化する忍びたちの心境を描いている。

 彼らの闘いから得られた結論は3巻のラスト1ページにあるお蝶と半四郎の会話にある。
 お蝶の問いかけに対し『そうともいえる……が、そうともいいきれまい』という答えが、半四郎の複雑な思いを表現し、お蝶が半四郎に語った最後の忍びばたらきがお蝶の、情に生きた忍びとしての意義を表現しており、これらの会話を読むことでこれまでの時世の変化に対応し戦ってきた忍びの一生を物語っていると感じた。

 また伴忍びの頭領・太郎左衛門の生き方も新しい時代を目指したものとして描かれている。
 山中忍びと手を組んでから、信長を守るため常に側に張り付き、回りに気を配り、信長が苦笑いしながらねぎらいの言葉をかけるほどに身骨を砕いた。
 その最後は、これまでの忍びにない生き方が描かれており、本作品において印象に残っている部分でもある。

 後半では、半四郎の新しい生き方が描かれている。
 忍びの彼に起こった心境の変化によって、妻を迎えたことは、読み進めていく中で気になっていた部分であり、ほっとした気持ちにさせられた。
 急激に変化する時代に合わせて生きる空しさを感じた忍びが掴んだ、人としての幸せも一つの結論なのだと感じた。

 本作品では、多くは戦国時代の闘いと情勢が描かれ、忍びたちの姿は1/3ほどしか描かれていない。
 史実の中での忍びを描いているから、物語が大きくうねるような面白さはないが、逆にその時代の激しい流れに翻弄されながらも、影となって必死に戦う忍びたちの姿がくっきりと浮かび上がり、その生き様を見せつけられたように思う。

 生き様といえば、忍びの他に生き様がしっかりと描かれている武士がいる。
 鳥居強右衛門(とりいすねえもん)である。
 武田の厳重な長篠城包囲を抜け出し、援軍の情報を長篠城へ知らせたエピソードが存分に描かれており、そこに徳川方に潜入していた半四郎が関係してくるから、この人物に関連する話が細かく書かれていても違和感がない。
 それどころか、このエピソードによって半四郎の人間像がより深くなったように感じた。

 ちなみに山岡荘八原作、横山光輝の「徳川家康」4巻にも鳥居強右衛門の話が描かれ、強右衛門の忠烈ぶりに感動した武田武士が、その最後を姿を描き旗印にした写真が掲載されている。(これの旗印の話は小説にはない)

徳川家康 (4) (講談社漫画文庫)
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