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旅路 ( 池波正太郎 )

 池波正太郎著「旅路」を読んだ。
 夫の敵討ちに燃える三千代と翻弄された男たちの悲劇。

旅路 (上)
旅路 (上) (文春文庫 (142‐28))
おすすめ度:
旅路 (下)
旅路 (下) (文春文庫 (142‐29))
おすすめ度:
著者:池波正太郎
出版社:文春文庫
出版日:1982-01
powered by a4t.jp

 お気に入り度:★★★★

あらすじ

 三千代は結婚して1年目に最愛の夫・三浦芳之助を斬り殺された。夫を斬殺したのは藩士たちから嫌われており、三千代への求婚を断られた近藤虎次郎だった。虎次郎は出奔。しかし藩の裁決は誰もが首を捻るものであり、到底納得できるものではなかった。
 三千代の憎しみはますます燃え上がり、夫の敵・虎次郎を討つべく、三浦家の若党・井上忠八とともに彦根藩を出奔した。
 虎次郎を追って江戸へ向かった三千代と忠八。
 若く美しい三千代は、三千代に惹かれた男たちに運命を翻弄され、そして男たちも三千代とともに運命に翻弄されていく。
 長い旅路の果てに三千代が掴んだものは……

感想

 あっと言う間に読み終えてしまった。

 物語は完全な三千代目線の展開から始まり、読者へ『悪人虎次郎』を印象づける。
 しかし藩の裁定や、江戸で密かに三千代を見つけた虎次郎の行動は、読者に虎次郎の起こした事件の裏に何か理由があるのだろうという疑問を想起させ、疑問の答えを知りたい欲求を沸き上がらせる。
 さらに池波氏がよく使う登場人物たちの絶妙なすれ違いを起こすことで、読者を焦らし、ますます物語の世界へ読者の意識を引きずり込ませる。
 また程良いタイミングで登場人物たちに予想もしない出来事を起こして物語にうねりを与えて、読者の目を引きつけて離させない。

 これらの池波氏の仕組んだ読者の心を掴んではなさない『罠』にまんまと引っかかり、いっきに読み終えてしまった。
 もちろんこれらの仕掛けだけでなく、違和感がなく生き生きと動き回る登場人物たちがいるからこそ、物語の世界に入り込むことができる。

 ところで今回の主人公・三千代は特徴的な人物である。
 本人はその気がなくとも、若く美しい三千代に惹き付けられた男たちは数しれず。その男たちのほとんどは不幸な状況に陥ってしまう。
 ある意味、魔性の女である。こう書いてしまうと妖しい色気を放つ女のように感じるかもしれないがそうではない。
 三千代は虎次郎憎さの一念で回りが見えなくなってしまうタイプの女性で、自分の力ではどうしようもない状態になり困っている三千代に手を貸す男が現れると、それに甘えてしまうのである。
 それに留まらず助けた人の恩も忘れて、虎次郎憎しで行方不明になるから始末が悪い。

 本書を読んで三千代はなんて悪い恩知らずな女なのだろうと思う人がいると思う。
 作中にそう思う人物を登場させているくらいだから、池波氏も『そう思いながら』か『そのように』三千代を描いたのだろう。
 エッセイで池波氏は登場人物たちが勝手に動き出すと言っていたから、どちらかというと生き生きと動く三千代を『そう思いながら』描いたのではないだろうか。

 このような主人公にもかかわらず、読者を惹き付けて話さない池波氏の仕掛けで読み終えることができたのだが、結末は個人的にイマイチな印象を持った。
 三千代は多くの男たちの犠牲を糧に幸せになるのである。幸せになって悪くはないが、虎次郎の無念を考えると、どうもすっきりとしない。
 しかし作者は、三千代の波乱の人生だけでなく、三千代に翻弄された男たちの姿とその空しさを描いたのかもしれない。
 それは最後の一行『新宿の宿外れの、松林の奥の土の下で、近藤虎次郎の遺体は、すでに白骨化していた』が物語っているように思える。

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HN:yososuzume
星新一と藤沢周平中毒者。
ミステリー・サスペンス、ホラー、歴史人物、ユーモアなど幅広く読んでいます。

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