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火の国の城 ( 池波正太郎 )

 池波正太郎著「火の国の城」を読んだ。
 加藤清正のために命を賭けた熱い血を持つ忍び物語。
蝶の戦記」「忍びの風」に続き、甲賀・杉谷忍びお蝶が登場する物語。

火の国の城 上
火の国の城 上 新装版   文春文庫 い 4-78
おすすめ度:
火の国の城 下
火の国の城 下 新装版   文春文庫 い 4-79
おすすめ度:
著者:池波正太郎
出版社:文春文庫
出版日:2002-09
powered by a4t.jp

 お気に入り度:★★★★

蝶の戦記」では、姉川の合戦の八年後、打倒信長のために再び上杉家に現れた甲賀・杉谷忍びのお蝶が、謙信の死によって希望を打ち砕かれ、失意のうちに上杉を去るところまでを描いていた。

忍びの風」では、甲賀・伴忍びの井笠半四郎を主人公、お蝶を半四郎の人生に多大な影響をあたえる準主役として、姉川の合戦目前から信長の死後、天下が秀吉と家康が勢力を争う情況になり、激動する戦国の世とそれに合わせて変わってゆく忍びの世界を戦い抜き、半四郎は忍びを捨て、お蝶はどこかへ去っていくところまでを描いていた。

 本作「火の国の城」では、関ヶ原合戦の五年後から始まり、豊臣家が滅亡するまでの時代において、甲賀・山中忍びを裏切った主人公・丹波大介と、彼と共に加藤清正の忍び働きをすることになったお蝶ら杉谷忍びの生き残りたちの姿を描いている。

あらすじ

 甲賀を裏切り、関ヶ原の合戦では真田の為に働いた甲賀忍びの丹波大介は、関ヶ原の合戦の五年後、京の変わり様を見に来ていた。
 大介はそこで、共に真田のために関ヶ原の合戦を戦った真田忍びの奥村弥五兵衛と出会った。
 甲斐の丹波村で妻を娶り暮らしていた大介だったが、弥五兵衛の忍び働きの話を受け、加藤清正の元で忍び働きをすることを決めた。

 関東と大阪の仲が悪いと噂されるなか大介は、関東と大阪の戦回避を目的とし徳川方の情報入手と高台院との連絡役を行っていた。
 しかし、かつての裏切りから伊賀忍びと甲賀・山中忍びに命を狙われており、一人では手が足りなくなった大介は『杉谷のお婆』こと甲賀・杉谷忍びのお蝶に助力を求めた。
 杉谷忍びは関ヶ原の合戦で滅んでいたが、その生き残りたちは丹波大介とともに清正の元で働き始める。

 幕府を開いた徳川が、なかなか屈しない豊臣を機会が有れば攻め滅ぼしてしまおうという動きを見せるなか、大介たちは秀頼と家康面会実現に向けて清正のために決死の働きを見せる。

感想

 本書を読むと、若干立場や役割などが違うが、真田太平記に登場する忍びたちの多くが活躍するのを目の当たりにする。
 真田忍びの奥村弥五兵衛と向井佐助、山中忍びで加藤家に潜む伴野久右衛門と料理人・梅春、真田忍び宿の隣の甲賀忍びである足袋し才六と小たまたちである。
 彼らが登場することで、真田太平記を読んだことがある読者にとって懐かしく感じられ、この物語が以前体験したことがあるような、より身近なものとなっている。
 また引き続き登場する六十をこえた杉谷忍びのお蝶の活躍もうれしい。

 本作品は、「蝶の戦記」「忍びの風」と比べて、合戦がなく、徳川と豊臣方が水面下で駆け引きする展開が中心で、忍びたちの活躍の場が約束されたような環境である。
 とはいえ、おおかたの勢力は徳川のために働く甲賀・山中忍びが全国に網を張り巡らせている状況にあり、その中で清正のために働く丹波大介と杉谷忍びたちが活躍するさまに興奮されられ、さらに丹波大介が伊賀、甲賀から命を狙われているという厳しい立場と危機的状況を切り抜ける活躍が見物である。
蝶の戦記」「忍びの風」「火の国の城」のなかで個人的に、「火の国の城」の本書が一番興奮させられた。
 変装、潜伏、尾行などの忍者同士の騙し合いや超人的な運動能力を駆使した闘いにとても引きつけられた。

 杉谷忍びが登場するシリーズの
蝶の戦記」では、古い体制を守り仕えた大名一筋に生きる忍びの姿が描かれていた。
忍びの風」では、時代を読み、力のある大名につく忍びと、古い体制と新しい時代の中で揺れ動く忍びの姿が描かれていた。
 本書「火の国の城」では、豊富な資金を使い徳川に組みする『冷たい血』の忍びに対抗する形で、割に合わない仕事と知りつつも惚れ込んだ主のために命を捨てて働く『熱い血』をもった忍びを描いている。

 最後に姿を見せた大介の行動は、毒殺された清正の無念を晴らすための納得できる行動であり、読者も納得できるラストシーンであると思う。
 また清正に惚れ込み、彼を助けてきた大介になりきった作者が起こした報復行動ともとれる。

 ちなみに池波氏の作品に「忍者丹波大介」がある。
 この作品は、本書に登場する前、関ヶ原の戦いで甲賀・山中忍びを裏切り真田のために戦った丹波大介の姿が描かれている。ここに本書の物語の中核を成す因縁の闘いの原因がはっきりと描かれていると思う。
 ちなみに「忍者丹波大介」を読む順番として、時代の流れに沿って読む場合「蝶の戦記」「忍びの風」「忍者丹波大介」「火の国の城」
 お蝶が登場するシリーズとして読む場合、「蝶の戦記」「忍びの風」「火の国の城」と読み、「忍者丹波大介」を外伝的に読んだ方がいいと思う。

忍者丹波大介 (角川文庫)
忍者丹波大介 (角川文庫)
著者:池波正太郎
出版社:角川文庫
出版日:2008-04
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