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オロロ畑でつかまえて ( 荻原浩 )

 荻原浩著『オロロ畑でつかまえて』を読んだ。
 金欠ドタバタ村おこしと、父娘のビターチョコな交流。そして恋。

 お気に入り度:★★★★★

 日本の秘境・牛穴村。人口わずか三百人で、主な産物はカンピョウ、ヘラチョンペ、そしてオロロ豆。大した産物もないど田舎の村は、超過疎化に疲弊し、このままでは立ちゆかなくなる。そこで村の青年団は一念発起。東京の広告代理店に村おこしを依頼した。
 しかし予算は僅か。やっと、村おこしを請け負ってくれるユニバーサル広告社を見つけたのだが、そこは倒産寸前の広告会社だった。

 本書は、第十回小説すばる新人賞受賞を受賞した作品。荻原浩のデビュー作なのだが、作品の完成度は高く、とにかく面白い。村の青年団と広告社の、個性的なキャラクターたちが動けば、どんどん面白い方向にいってしまう。村の青年団は、牛穴弁と東京弁を話せる者はバイリンガルだというし、ユニバーサル広告の社員はたった三人に、アルバイト一人の零細企業。
 そんな彼らの村おこし『牛穴湖の“ウッシー”』計画は、マスコミも巻き込んだ思わぬ大反響を呼ぶのだが、いかんせん低予算。その綱渡り的村おこしの顛末は、コントを見ているよう。この村おこしで、村の青年の一人に意外な恋が実ったりと、読んでいる方は、牛穴村の町おこしが成功するかどうかなんて、もうどうでもいいという感じだ。

 本書の中でも中心的なキャラクターが、ユニバーサル広告の杉山だ。彼は酒に飲まれる。ほんの数杯で記憶を無くし、たちまち芸達者となる。牛穴村の青年団には好評だったようだが、奥さんには不評で離婚してしまった。彼にはもうすぐ小学生になるサッカー好きの娘がいるのだが、実にさっぱりしている。今度新しい父親が来るから、杉山は『父ちゃん1号』だという。この娘と、娘と距離を置かざるを得ないものの、娘が大好きな杉山の交流は、苦くて甘くてビターチョコレートみたいだ。

「ねえ、新しい父ちゃん、サッカーうまいかな」帰り際になって早苗が少し心細そうな声を出した。「ヘタッピはやだな」
 杉山は、せいいっぱいの明るい声で言う。
「こうしよう。もし、そいつが父ちゃんよりヘタッピだったら、父ちゃんが秘密特訓をしてやる。母ちゃんには内緒だぞ」
(略)
 新しい父親がどんな男かは知らないが、サッカーなんてしたこともないような奴だといい。止まっているボールも空振りしてしまうような。

 娘を持つなら、こんな女の子がいいと思った。杉山をうらやましく感じた。このあと娘から「父ちゃん、だめだ。ヘタッピだったよ」との連絡に、杉山と一緒に喜ぶ自分がいた。単純だな自分。

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