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サニーサイドエッグ ( 荻原浩 )

 荻原浩著『サニーサイドエッグ』を読んだ。
 ヤクザ相手にキメるハードボイルドに拍手。しかしTPOが絶妙にずれたキメゼリフが滑稽で、つい吹きだしてしまう。

 お気に入り度:★★★★★

サニーサイドエッグ 内容紹介(表紙裏より)

 フィリップ・マーロウに憧れる私は、むろん私立探偵である。
 が、やむなく、失踪したペットの捜索を請け負うこともある。
 ある日、和服を着た美しい女性が事務所を訪れてきた。
 ペット捜しならもう――
「うちの猫を探してほしいんです」はい喜んで。一ヶ月ぶりの仕事ではないか。
 しかもそうこうするうち、なんと「ブロンドで青い目の若い」秘書まで雇えることに。
 え、な、なんだこいつは!?
 おまけに猫探しも、ただの猫捜しではなくなっていくのだった……。
『ハードボイルド・エッグ』続編。最上俊平ふたたび!

ハードボイルド・エッグ」の続編となるハードボイルドユーモア小説。
 最上俊平は探偵になって三年、フィリップ・マーロウ憧れてハードボイルドを決めているものの、やってくるのは動物捜しの依頼ばかり。ところが、追っていた犬が意外な事件を引き寄せて、ダイナマイトバディーの秘書とともに、ドタバタの事件解決となった前編。

 そして本作、依頼は相変わらず動物捜しばかりだ。
 といっても、気の進まない物件ばかりじゃない。
 なんと、和服で清楚な美人がロシアンブルーの捜索を依頼してきたのだ。
 妄想は膨らむ。猫を探し当てた暁には……。
 ついでに股間も膨らませ、猫探しを始めた。

 それと前後して、ヤクザからも「猫を探せ」という依頼が下った。
 それも同じロシアンブルー。珍しいこともあるものだ。
 しかし動物捜しのプロにはおやすい御用だ。

 ところが最近、この辺りでは動物殺しの事件が頻発している。
 探している猫も狙われる恐れがあり、時間との勝負になるだろう。
 ブロンドで青い瞳の新しいパートナーがきっと力になってくれるはずだ。

 フィリップ・マーロウに憧れる主人公のハードボイルド具合は、前作よりさらにパワーアップ。
 ヤクザに脅されても、おどけてハードボイルドをキメる最上の肝は太い。
 しかも、ヤクザに「ヘルプ・ニャー」と書かれた名刺を渡さない冷静さをあわせ持つ。
 最上は筋金入りのハードボイルド探偵なのだ。
 でもどこか滑稽で、つい吹きだしてしまう。

 金髪ヤクザに短刀で腹を刺された最上。
 しかし、ポケットに忍ばせておいたホタテの殻が守ってくれた。
 そこで金髪に言い放つ。

「どこで買ったんだ、そのフルーツナイフ。百円ショップかい」

 とにかく相手を逆上させ、呆れさせるばかり。TPOが絶妙にズレたハードボイルドなキメゼリフがとにかく面白い。
 また、著者荻原浩の描くヤクザも絶品。
「なかよし小鳩組」や「誘拐ラプソディー」と同じく、怖くもあり滑稽な生態のヤクザが笑わせてくれる。

 猫捜しの依頼を受け、ヤクザの事務所に出向いた最上。
 猫の名前を聞くと、組長は、壁から突き出たヘラジカの首を指して言う。

「探偵さん、あの鹿の名前が分かるかい? 」
「いえ」
「わかんないだろ。最初からないんだよ、名前なんか。鹿は鹿。猫は猫だ。それでいいじゃねぇか、な」

 なかなか口を割らない組長。
 最上は、巧みな弁舌で、猫捜しには名前が必要だと説く。
 すると組長は、「教えてやれ」と後ろのカシラを振り向いた。
 カシラの添田は目を剥いた。自分を指さし、悲壮感を漂わせ、唇を震わせて言った。
「チョコピー」
「だ」

 組長が語尾を付け足した。
 リアリティーを追求すればこんなやりとりはあるはずないが、違和感を感じないのは、ヤクザの怖い面をしっかりと描いているからだろう。
 だからこそ、ありえない場面とのギャップが面白い。

 物語は、単純な猫捜しとヤクザの関わり合いだけにとどまらず、青い瞳のブロンドガール秘書の秘密や、動物殺しの顛末など、複数のストーリーが絡み合い、さらに主人公の場違いなハードボイルドなセリフが面白すぎて、ひとときも息が抜けない。
 久しぶりに小説を味わい尽くした感じがした作品だった。

 帯にある『Jもふたたび』も、このシリーズの滑稽なハードボイルドの味わいを、見事に抜き出していた。

「何か食うかい、探偵。今日はメニューが二種類ある。暖かいポークビーンズと冷めたポークビーンズだ。どっちにする? 」
 私はグラスを持ち上げて軽くふってみせ、今夜は酒だけあればじゅうぶんだ、という意思表示をする。ピスタチオを立て続けに放りこんで空腹をなだめた。ここの他のメニュー同様、Jの店のポークビーンズは決して安くない。
「そう言えば、もうメニューにおでんはないんだね」
 少し前、Jはおでんの食えるジャズ・バーを目指して店を改装し、カウンターの中に巨大な鍋を設置したのだが、あきらめたようだ。

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