忍者ブログ

Reading Books [ 書評・ブックレビュー ]

Home > 藤沢周平 > 霧の果て―神谷玄次郎捕物控

霧の果て―神谷玄次郎捕物控 ( 藤沢周平 )

 藤沢周平著「霧の果て―神谷玄次郎捕物控」を読んだ。
 家族に起こった不運により霧に包まれてしまった玄次郎が、行き着いたその果てに思い人がいる。

霧の果て―神谷玄次郎捕物控 (文春文庫 (192‐12))
霧の果て―神谷玄次郎捕物控 (文春文庫 (192‐12))
著者:藤沢周平
出版社:文春文庫
出版日:1985-06
おすすめ度:
Amazon.co.jp で詳細を見る

 お気に入り度:★★★★

※2010/2/14:追記訂正

 北の定町回り同心・神谷玄次郎が活躍する捕物帳。
 一話完結で八話が収録されている。

あらすじ

 北の定町回りの玄次郎。奉行所きっての怠け者と思われている。
 しかし、それには理由がある。父・勝左衛門はある殺人事件を追っていたが母と妹が殺され、奉行所は異例の捜査を行ったが、途中で調べを中断した。それから勝左衛門は元気をなくし、死んでいった。
 玄次郎が怠けているのは、足を摺りへらして町を巡回し、鋭い取り調べで数々の犯罪を摘発してきながらも、奉行所に見捨てられた父への供養でもあった。

 怠け者と思われている玄次郎でも、事件が起きると父譲りの綿密で鋭い取り調べで、次々と目の覚めるような解決をしていくが、あるとき、一度は闇に葬られたと思われた父の死に関連した事件の文書が見つかった。
 玄次郎は密かに岡っ引・銀蔵とともに探索を始めた。

感想

 本作品はシリアスな捕物帳で、母と妹、そして父を亡くした玄次郎の憂いを含んだ、もの悲しい物語でもある。
 掲載されている物語は、一話完結の捕物帳の形をとっている。
 そして各物語を貫く大きな流れとして、玄次郎の父母妹が亡くなるきっかけとなった事件の真相を追い、明らかにすることにある。

 この流れは佐藤雅美著「物書同心居眠り紋蔵」とよく似ている。(本書の方が先に書かれているので、本当は居眠り紋蔵が似ている)
 居眠り紋蔵は突然居眠りしてしまうという奇病を持つため、父の仕事だった定町回りの役につけない。しかし父譲りの敏腕と好奇心で、なんだかんだと事件を解決してしまう。
 紋蔵の父もある事件によって命を落とし、奉行所はその探索をうち切っていたが、父の事件にかかわる情報をきっかけに、事件の真相にのりだすというストーリー。
(居眠り紋蔵はシリーズもので、この父のくだりもストーリーの一部として存在しており、父の事件を解決して終わりではない)

 物語は怠け者の北の定町回り同心・神谷玄次郎が、見事な手腕で事件を解決することからはじまるが、玄次郎を取り巻く環境はほとんど説明されていない。
 玄次郎の母、妹が殺され、父がその後死んでしまったことが描かれているのが三話目の『春の闇』
 始めの二話でただの捕物帳であったものが、三話目から玄次郎の影の部分を描くことによって、大きな流れが生まれ、作品に深みを加えているように思う。

 この物語のラストはやりきれなく切ないものだが、空しさを覚えた玄次郎が心のより所だった情人のお津世を思うことによって、霧に包まれた玄次郎の世界に切れ間が見えたような救いが感じられた。

スポンサーリンク
ページトップへ

プロフィール

profile
HN:yososuzume
星新一と藤沢周平中毒者。
ミステリー・サスペンス、ホラー、歴史人物、ユーモアなど幅広く読んでいます。

Twitter:@yososuzumeをフォロー

mail

PR

アーカイブ

ブログランキング

  • 人気ブログランキングへ
  • にほんブログ村 本ブログへ
  • にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
  • にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
  • にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ
  • 池波正太郎
  • 藤沢周平作品を語ろう
  • 本好きPeople

Copyright c2008 Reading Books All Rights Reserved
忍者ブログ [PR]