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アジア新聞屋台村 ( 高野秀行 )

 高野秀行著「アジア新聞屋台村」を読んだ。
 タカノ青年が、アジアの多国籍屋台村とも呼べる日本の新聞社で遭遇する、混沌のアジアンパワーと、奮闘の青春記。

アジア新聞屋台村 (集英社文庫)
アジア新聞屋台村 (集英社文庫)
著者:高野 秀行
出版社:集英社文庫
おすすめ度:
Amazon.co.jp で詳細を見る

 お気に入り度:★★★★

 物語は、フリーライターのタカノ青年にかかってきた一本の電話から始まる。
 エイジアンという東京にある謎の新聞社から、タイについての記事を依頼されたタカノ青年は、オフィスを訪れた。
 そこでは、台湾、タイ、ミャンマー、インドネシア、マレーシアの在日外国人と日本人に向けた、半分外国語、半分日本語でそれぞれ違う記事を掲載するという不思議な新聞を発行していた。
 実はこの会社、各発行新聞に合わせた外国人ばかりで日本人は一人もいない。日本語ページは間違いだらけで校正もしない。それを指摘したタカノ青年は、日本人がいたら便利だということで、アジアの新聞が集まる屋台のような新聞社エイジアンの編集顧問に就任することとなった。

 この作品は、エイジアン新聞社でのハチャメチャな新聞作りを物語の軸にしながら、新聞作りを通して台湾、タイ、ミャンマー、インドネシア、マレーシア、韓国の人々とおりなす、タカノ青年の混沌と奮闘の青春記である。これまでの高野作品と同じくユーモアに満ちたエンターテインメント作品。

 この作品が魅力的なのは、国籍の違いを単なる個性として感じさせる無国籍感。
 日本、台湾、タイ、ミャンマー、インドネシア、マレーシア、韓国というパーソナリティーを持った人間同士のコミュニティーを楽しめる。そんな中にも小さな民族対立など生々しい民族模様が展開されるのも面白い。
 この作品の見所は、そういう日本語を共通語にして、さまざまな在日外国人向けの新聞を作る在日外国人達の人間模様であり、混沌としたハチャメチャ感である。

 そのエイジアン新聞社での、ハチャメチャでユニークな新聞作りを行う登場人物たちは個性的で多彩。
 面白いことを求め安定すると新しいことを始める好奇心いっぱいの子犬的社長の台湾人劉さん、美人系容姿を持つクールな姉御的雰囲気の韓国人朴さん、大学院生でかわいい系タイ人のレックちゃん、エリート一家に育った武蔵丸的容貌で豪快なインドネシア人医師バンバンさん、各国用の名前を使い分け人の噂話は絶対しないエイジアンの良心と言われるミャンマー人マ・ラ・ウィンさん、シャイで大人しいイギリス人ロックバンドのメンバーセバスチャン、敬虔なムスリムにして大手国際電話会社のプリペイドカード売り上げ日本一を誇るインドネシア人アブさん、など他にも多くの個性的な人物が登場する。

 この本を読み終えると、日本はなんて潔癖なんだろうと感じる。
 多国籍だから暗黙のルールもない。混沌?何か変わったものがゴロゴロそこらじゅうに転がっていそうで面白いじゃないか、という気分にさせられる。
 そう思わせるのは、高野氏の筆致が巧みであり、彼の目を通して個性豊かな登場人物達を見ているからだろう。
「異国トーキョー漂流記」と並んで、日本にいる外国人の見る目が変わる作品である。

 ところで本書を読んだ人は、少なからず、この作品がノンフィクションであるような錯覚に陥ると思う。

 というのも、物語の文章はノンフィクションそのもので、いくら小説として読もうとしてもノンフィクションとして読んでしまうことに加え、主人公タカノ青年のプロフィールは、大学探検部時代にコンゴで怪獣を探し(幻獣ムベンベを追え)、ミャンマーのゴールデントライアングルでせっせとアヘンを生産し(アヘン王国潜入記)、中国南部からミャンマーを通りインドに入国(西南シルクロードは密林に消える)など、著者のプロフィールそのものであり、このエイジアン新聞社にしても、以前高野氏が実際に勤めていた新聞社を材にしている。

 だから冒頭の編集部の補足で、<自伝的>物語としてお読み下さい、としているとおり、自伝を脚色した物語と見るのが妥当だろう。

 本書「アジア新聞屋台村」は、「異国トーキョー漂流記」、「ワセダ三畳青春記」と併せて「東京青春三部作」と位置づけられている。

異国トーキョー漂流記
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おすすめ度:
ワセダ三畳青春記
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おすすめ度:
著者:高野 秀行
出版社:集英社文庫
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