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アジア未知動物紀行―ベトナム・奄美・アフガニスタン ( 高野秀行 )

 高野秀行著『アジア未知動物紀行―ベトナム・奄美・アフガニスタン』を読んだ。
 計画無しの体当たり未知体験が著者を新しい境地に導く。

 お気に入り度:★★★★

アジア未知動物紀行 内容紹介(裏表紙より)

 まだ科学的に存在が確認されていない未知の動物をアジアの辺境で探す。いるのかいないのか、それは現地で調べてみなければわからない。ベトナムの猿人「フイハイ」、奄美大島の妖怪「ケンモン」、アフガニスタンの凶獣「ペシャクパラング」。読みだすと止まらなくなる驚きと笑いと発見のエンタメ・ノンフィクション!

 著者の高野秀行は、未知が大好物である。
 未知の解明に、綿密な計画を立て、万全の状態で望むのを常としている。しかし、彼の行くところは辺境であり、想定外の出来事に遭遇するのも常である。
 以前、彼は、満を持して謎の怪魚「ウモッカ」を探しにインドへ飛んだ(『怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道』)。ところが、『西南シルクロードは密林に消える』でやらかしたことが原因で、空港で入国拒否され、一緒に行った親友が怪魚探しを行うという奇妙なことになった。一方、日本へ舞い戻った彼は、さまざまな外交ルートを通じてインド入国を嘆願し、自転車で東京から沖縄へ向かいながら神社仏閣でインド入国祈願をするという神頼みの旅を敢行したものの(『神に頼って走れ!―自転車爆走日本南下旅日記』)、いまだインド入国は果たせていない。

 そんな状態にある著者は、欲求不満がたまるばかりである。
 そこへ、ベトナムの猿人「フイハイ」のことを聞いた著者に火がついた。普段は入念な準備を怠らない著者だが、インド入国拒否で入念な準備は吹っ飛んだこともあり、著者の鬱憤は限界を超え、思い立って十日でベトナムへ。もちろん入念な準備はなしである。

 そういうことで始まったアジア未知動物探しは、著者の未知中毒を満たすだけの旅。とにかく未知に触れたくてしかたないのだ。入念な準備もなしに現地へ飛び、人々から未知動物の情報を聞いてまわる。
 その過程で未知動物が発見できればいうことはないのだが、話を聞けば聞くほど、その存在が怪しくなってくる。もやは妖怪の類であり、水木しげるの世界である。その事実を前にした著者は、この状況にどう対峙するのか。

 自然信仰が根底にあるアジアの国で、未知動物探しは本当に大変だ。
 アジアの未知動物は、呼び名はあるものの、実体がないものが多い。不思議な事が起きれば、そのモノが起こしたことだと囁かれるが、古くからそのモノを知っている老人などに聞くと、それは違うという話もでてきて、何が本当なのかすら分からなくなる。
 そんな状況に、著者は一つの答えに辿り着くが、それは著者を新たな境地へ導いたようでもあった。

 著者は、あとがきで、「私は柳田國男と逆の道をたどっているような気がする」と述べている。
 著者はこれまで、まず現実的に科学的なアプローチを試み、次ぎに現地の伝承や習慣を考慮して考察してきたという。しかし、いきなり未知へ飛び込んだ今回の体験では、それが小賢しい気がしてきたと述懐する。
 確かに、事前準備をしていると、その計画に基づいた行動や考察となり、先入観のようなある種の枠が出来てしまう。それが、時には、未知探しの障害となる可能性だってあるだろう。
 逆に、計画もなしに未知に触れるとどうなるか。未知は原因不明だから未知なのだ。自分の持っている知識では理解できないことも多い。だから未知を身体で感じ、ありのままを受け止めるしかない。かつて柳田國男が、人々に聞いた不思議な話を解明せずに受け止めたように、人々の話を受け止めるしかできなかった。
 このことを肌で感じた著者は、白黒つけたがっていた未知に対して、少しだけ寛容になったようである。

 著者の作品の魅力は、「いるのかいないのか」を信条に、現地の人々に笑われても屈せず、大真面目に未知と対峙することなのだが、今回は未知に体当たりしただけあって、これまでの怪獣探しのような滑稽さ漂う面白さはない。しかし、人々の話す未知に触れ、振り回されながらも、さまざまに考察する著者の様子もまた面白かった。

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