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メモリークエスト ( 高野秀行 )

 高野秀行著「メモリークエスト」を読んだ。
 三度の飯より未知が好き。高野秀行の未知好きは他人の記憶にまで。困難で滑稽で意外な顛末の記憶探索プロジェクト。

メモリークエスト
メモリークエスト
高野秀行
幻冬舎文庫 2011.11

by toku

 お気に入り度:★★★★★

 本書は、一般の人から世界各地の記憶に残るモノか人を募集し、著者がそれを探しに行くという、まったく新しいノンフィクションである。
「なんて面倒くさいことを」とか、「そんなのが面白いのか?」という疑問をお持ちの方は、以下を充分お読みの上、本書をご購入ください。
 そうでない方は、迷わず本書をご購入ください。

 前置きはそのくらいにして。
 常に未知の動物や土地、民族を探索し続けてきた著者。それゆえ多くの読者を惹きつけ、高野本ファンを獲得してきた。
 にもかかわらず、ここにきて他人の記憶探索である。
「もうネタ切れに違いない」とか、「とうとう他人のふんどしで相撲を取るとは」など、高野秀行の斜陽を心配する声もあるだろう。
 しかし、ちょっと待って欲しい。

 著者は、三度の飯より未知が好き。未知LOVE。未知がないと生きてゆけない、未知依存症人間である。すべては未知を愛するがゆえなのだ。
 そんな未知バカの、さまざまな特殊体験をしている著者でも、所詮は一個人。
 まだまだ自分の知らない未知があるはず。
 そこで著者は閃いた。
 日本一億三千万人の中には、自分の知らない変な人、奇妙なモノを見ているはずだ。
 彼らの記憶に残るモノの探索を募集したらいいじゃないか。
 そこからは、そうとう貴重なモノや、探すことによって大発見につながることもあるかもしれない。

 かくして集まった依頼は26件。そこから厳選して六件。
 著者は、一件にどのくらいの時間がかかるのか見当もつかないまま、最初の目的地、タイへ飛び立った。

 本書の魅力は、他の作品と同様、高野節とも言うべき、ユーモア溢れるノンフィクション。その旅が苛酷を極めるほど滑稽度が増していく。
 そして、他人の記憶に残る変なモノを探しに行くという、非常に面倒くさい旅を本気で遂行するバカらしさ。なにせ、古いものは1989年、新しくても2003年の記憶である。依頼を受けたのが2008年だから、風化激しい人の記憶を辿りながらの旅なのだ。苛酷な旅、間違いなしである。

 さて、今回の記憶の探索は、以下の通り。厳選したはずの六件と数が合わないのは極秘事項である。
【第一話】スーパー小学生を探し出せ(2003年タイ)
【第二話】根無し草男捕獲作戦(1995年タイ)
【第三話】楽園の春画老人は生きているか(1992年セーシェル)
【第四話】大脱走の男を追いかけろ(2000年南アフリカ)
【第五話】ユーゴ内戦に消えた友(1989年旧ユーゴスラビア)

 これらに困難が予想されるのは、著者の未知好き本位で選考したため、どの依頼も雲を掴むような探しモノになってしまったことだ。
 かなり年月が経っていることに加えて、情報が非常に少ない。苛酷な旅になっても自業自得である。
 どの村で出会ったのかもはっきしないタイのスーパー小学生だとか、六つの国境をノービザ、ノーパスポートで越えるというアフリカ大陸の半分を縦断した大脱走男だとか、今ではいくつかの国に分かれ、その紛争で手紙のやり取りが途絶えた旧ユーゴスラビアの友人だとか、どこから手をつけていいのやら。
 そんな、とんでもない記憶の探索で、著者は、気合いが入ったり、後悔したり、手のひら返しの探索を始めたりしながら、意外と楽しんでいる様子である。

 この記憶探索の困難で滑稽で意外な顛末は、本書を読んでもらうしかない。
 間違いなく言えるのは、「面白い!」ということだ。
 著者は懲りずに、そして今回の結果で大いに勢いづき、メモリークエスト第二弾が進行中である。

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