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幻獣ムベンベを追え ( 高野秀行 )

 高野秀行著『幻獣ムベンベを追え』を読んだ。
 本気の怪獣調査隊。苛酷な怪獣探査の顛末。ムベンベは本当に“幻獣”なのかもしれない。
 お気に入り度:★★★★

幻獣ムベンベを追え 内容紹介(裏表紙よりより)

 太古の昔からコンゴの奥地の湖に棲息するという謎の怪獣・モケーレ・ムベンベ発見を賭け、赤道直下の密林に挑んだ早稲田大学探検部の11人の勇猛果敢、荒唐無稽、前途多難なジャングル・サバイバル78日。「買ってね、読んでね。……今の世の中には、絶対に、こういう本が必要なんです」(解説)子供の心を忘れないあなたに贈る、痛快ノンフィクション。

 辺境作家高野秀行のデビュー作。
 早稲田大学探検部時代に、国交のないアフリカのコンゴのジャングルへ行き、怪獣ムベンベの探索をおこなった顛末を綴った作品。

 今でこそ、インターネットやGPSによって多くの情報が得られるが、彼らがコンゴ行きを決めたのは1987年。
 まだパソコンも一般的でない時代。
 しかも日本とコンゴは国交がなく、大使館の類もない。
 それでも著者たちが、回りから馬鹿にされながらも、「やると言ったら、やります! 」と意地を張ったのも、純粋に本当に怪獣はいるのだろうか、ムベンベの正体は何なのか、という好奇心から。
 ムベンベを調べれば調べるほど、未知への好奇心を刺激する情報が出てくるのだ。

 それだけに彼らの行動力は凄まじい。
 多くの企業への機材提供交渉から、コンゴの現地語リンガラ語の勉強、公用語のフランス語の勉強、現地人をポーターに雇うなど、大学生だけですべてやってのけた異常なバイタリティーが凄い。
 電車に乗っていた著者は、隣に座った外国人がフランス人だと知ると、フランス語を教えて欲しいと頼んだりしたり、「企業説得セット」なるものを考案し、効率的に企業へサポートを依頼する強かさも。

 そんな彼らが行った計画と準備は、なかなかのもの。
 それでも彼らは、現地でトラブルの数々にみまわれるのだから、この怪獣探査がいかに苛酷なのかが分かる。
 食糧不足と食料現地調達、マラリアとの戦い、コンゴ政府役人と原住民との不和。
 現地に行ってみないと分からないが、行けば確実にトラブルになる問題が待ち受けていたのだ。
 しかも、ムベンベはなかなか出てこない。
 湖を眺めるだけの毎日。
 探検部のメンバーは、肉体的精神的に疲労していく。

 そんな探検部の苛酷な怪獣探査が描かれているのだが、なかなか出てこないムベンベへの考察も忘れない。
 しかし、気になったのは、ムベンベという未知の生物がいるという前提で、怪獣探査がおこなわれたことだ。
 というのも、本書を読んでいると、ムベンベは本当に幻なのではないか、と思わせる記述がいくつもあったからだ。

  • ムベンベを目撃したという情報はあるものの、同時に見たという証言でも見た物がぴったり一致しない。
  • ムベンベがいるというテレ湖では、超音波ソナー、バッテリー、カメラ、ビデオなど多くの機材が不調となる。彼らが参考にしたレガスターズ隊の記録でも、同様に機材の故障が起こったらしい。
  • テレ湖上空では飛行機の計器も狂う。
  • 『テレ湖は隕石によって作られた』という伝説。
  • テレ湖周辺に落ちている鉄分を含んだらしい赤黒い隕石。

 これらから考えられるのは、ムベンベは、強い磁場が脳に影響した幻視なのではないか、ということ。
 幽霊も、磁場の影響による幻視との説もある。
 墓石に使われている花崗岩には、磁気を帯びた鉱物が含まれており、その磁気が脳に作用し、幽霊を幻視させる。
 また、幽霊が多く目撃される六甲山は、多くは花崗岩で形成されており、花崗岩には圧力が加わると電位を発生させるという性質も持つ。それによって発生した磁気が幽霊を幻視させているとも考えられる。

 そんな簡単に幻視なんてと思うかも知れないが、身近な例ではレビー小体型認知症では、幻視の症状がみられるという。
 見える物は、実際に存在しているかのように生々しいらしく、『虫が這っている』、『枕元に人が座っている』、『トイレに人の顔がたくさんある』など色々なものが見えるそうだ。
 以前NHKの番組「ためしてガッテン」では、【気づいて!新型認知症 見分け方&対策大公開】を放送し、家の中を見知らぬ男が歩きまわっていたり、妻と添い寝をする男を見たりする男性を紹介していた。

 レビー小体型認知症は、脳内にできたレビー小体という物質が、脳に作用して幻視を引き起こすという現象を考えると、強い磁場が脳に作用して幻視を引き起こすことも考えられなくもない。
 そしてムベンベも、幽霊と同様に強い磁場によって引き起こされた幻視とすると、無理がない。

 ムベンベが一部の人間にしか目撃されていないのは、きっと磁場の影響を受けやすい人間や、磁場の影響を受けやすい体調のときでしか見ないからだろう。
 人々がムベンベを見るのは、頭にムベンベや怪獣、恐竜などの情報があるからではないかと思う。この土地にムベンベの伝説ではなく、宇宙人の伝説などがあれば、宇宙人を目撃しているかも知れない。
 結局ムベンベは、本当に幻の怪獣なのかもしれない。

 磁場の影響が本当に幻視を生み出すのか、という疑問はあるが、こういう視点の調査もおこなわれていれば、より濃厚な怪獣探査になったように思う。

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