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腰痛探検家 ( 高野秀行 )

 高野秀行著「腰痛探検家」を読んだ。
 腰痛という秘境に足を踏み入れた著者。生還を目指した探検をリポートする腰痛エンターテインメント。

腰痛探検家
腰痛探検家
高野秀行
集英社文庫 2010-11

by toku

 お気に入り度:★★★★

 未知を求め、世界の辺境を旅してきた著者。今回足を踏み入れたのは、腰痛という未知の世界だった。
 密林のごとく治療院の乱立する腰痛業界に足を踏み入れた著者は、生還を果たすため道なき道を彷徨い歩く。そこには著者を森深く誘い込む流転の診断が。
 本書は、その探検の顛末をユーモラスに描いた体験記である。

 読み始めると腰痛治療の深淵さを目の当たりにする。
 さまざまな原因、さまざまな専門家(医療機関である整形外科から医療機関でない民間療法まで)、そしてさまざまな診断。本当に何を信じていいのか、まさに密林を彷徨っているようなのだ。
 爽やかな若先生に後ろ髪を引かれつつ別れを告げ、次に身を委ねたカリスマ治療士に見放され、整形外科の名医にも振られ、リハビリ療法士に将来を夢見るも鍼治療獣医に浮気、果ては心療内科医へと、華麗な治療士遍歴を重ねる著者。そこで下される診断は単なる腰痛から難病の可能性まで。いったいどうなっているのか。何が本当なのか。出口はあるのか。腰痛を知り尽くした腰痛スペシャリストがいないのが残念である。
 著者は、これら治療院での信頼と疑心の間で揺れ動く心理を、ダメ男と縁の切れないダメ女子の心理だと自嘲するが、相当不安だったはずである。それにも関わらず踏破した著者は、まさに探検家。彼の残した足跡は、迷いやすい腰痛世界に足を踏み入れた人々の導となるはずだ。
 加えて、泥沼化するかもしれない腰痛治療の実態を明らかにし、この世界に踏み込むことの危険を警告。腰は労らなければいけないと思い知らされる。

 その一方、密林から簡単に抜け出られる不思議な例も挙げている。
 著者を見放したカリスマ治療士。しかし改善例も耳にしている。そこで、著者がその腕を確かめるべく白羽の矢を立てたのは、同じく腰痛の密林に迷い込んだスーダン人の友人だった。そして友人には効果てきめん。瞬く間に腰痛が改善していくのである。あっけにとられる。何が起こったのか。著者にはなぜ効かないのか。人体の不思議である。

 本書を読むと、腰痛は本当に摩訶不思議なものに思えてくる。そして自分の腰痛に合った治療院を探すことの難しさを痛感させられる。
 その腰痛を、魅力的なエンターテインメント・ノンフィクションとして書き上げた著者の筆力は、見事としか言いようがない。

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