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西南シルクロードは密林に消える ( 高野秀行 )

 高野秀行著「西南シルクロードは密林に消える」を読んだ。
『縁』が紡いだ西南シルクロード。悲惨で過酷で滑稽なエンターテインメントノンフィクション。

西南シルクロードは密林に消える (講談社文庫)
西南シルクロードは密林に消える
著者:高野 秀行
出版社:講談社文庫
おすすめ度:
Amazon.co.jp で詳細を見る

 お気に入り度:★★★★★

 オンライン書店【ビーケーワン】から届いた本を見て喜んだ。本が厚いのだ。
 厚い本を読む場合、大抵「よし、読むぞ」と身構えてから読むことが多いのだが、本書「西南シルクロードは密林に消える」の著者高野秀行氏の作品は別物である。

 高野秀行氏の作品は、彼が目指すエンタメノンフ(エンターテインメントノンフィクション)の言葉通り、多くは過酷な旅の実録にもかかわらず、その苦難をハラハラドキドキに変えて描き、ユーモラスな書き味と合わせて、とても面白い。まるで自分も一緒に旅をしているようなのだ。

 しかも、ただ面白いだけではない。
 彼が訪れる辺境の人々(反政府独立ゲリラなど)に、溶け込んで仲良くなるのである。
 その辺境の人々を鋭い観察眼で生き生きと描き、恵まれた言語感で何とかコミュニケーションをとって交流していく様子はすばらしい。

 作品を読み終えるときには、祭りのあとの静けさのようでもあり、『このまま終わってしまうのは寂しい。でも終わってしまう。これまでの旅は苦難つづきだったが、終えてみると楽しかったなぁ』という余韻を残す読後感が、読者を包み込む。

 本書「西南シルクロードは密林に消える」では、そんな高野秀行作品の魅力がふんだんに詰まった傑作である。
 中国四川省成都~雲南省瑞麗~ビルマ北部~インド北東部~カルカッタの旅程を踏破した四ヶ月の記録であり、その半分以上がビルマ北部とインド北東部における、カチン人ゲリラとナガ人ゲリラと行動を共にしてジャングル抜けや山脈を越える探検行となっている。

 ゲリラ達が活動するエリアというのは、当然、外国人の出入国など許している筈もなく、国境越えはすべて密入出国。
 これがこの本の緊張感を生むピースの一つとして組み込まれ、中国公安による拘束から始まるプロローグで、『いきなり大ピンチ!これからどうなるのか』と、読者の心を鷲掴みにする。

 プロローグに続く、第1章『中国西南部の「天国と地獄」』は四川省成都、雲南省瑞麗の紀行文的なものになっており、嵐の前の静けさといったところ。
 しかし7節『タイ族の古都・瑞麗の悪夢』、8節『全財産は風とともに去りぬ』で、いきなり訪れた嵐によって持ってきた現金七十万すべてが消え去るのである。
 プロローグでの危機、本格的な旅を前に全財産が無くなる危機を読んだら最後、この本の魔力に取り憑かれてしまう。

 ところで高野秀行氏がなぜ、外国人が出入国できないエリアを出入りし、インドへ到達出来たのかと、不思議に思う人がいると思う。
 この答えこそが、本書のテーマ『シルクロード』と密接な関わりを持っている。
 高野秀行氏がビルマ北部へ入ることができたのは、同じビルマのたった一人の知り合いシャン人ゲリラから、ビルマ北部を支配するカチン人ゲリラを紹介してもらったからだ。

 この後も知り合いから知り合いを渡り歩き、ついにはインド・カルカッタへ到達する。
 この旅程を読んで私の頭に『縁』という言葉が浮かんだ。
 高野秀行氏は『縁』によって紡がれた『道』を通ってカルカッタまで行くことができたのだ。

 高野秀行氏の作品、特に文庫本の魅力が他にもある。
 それは必ず掲載されている『あとがき』である。
 文庫本にはさらに『文庫版へのあとがき』も掲載されていることが多々ある。
 これらによって、探検行紀の補足だとか、旅の後日談が書かれており、本書では特に『文庫版へのあとがき』で、別れたゲリラたちのその後が描かれており、読者を満腹にさせる。

 本書を読み終えると、高野秀行氏がこの旅を完結できたのは『縁』だけではないと感じる。
 インドからの奇跡の帰国(北京の入国で止まっているパスポートとビザなし)、旅の翌年に発生したゲリラの地域に騒乱、が彼の幸運を示している。

 とはいうものの、奇跡の帰国を果たした彼は、今回の旅が原因のアクシデントに後年襲われる。
 それは「怪魚ウモッカ格闘記 - インドへの道」や「神に頼って走れ! - 自転車爆走日本南下旅日記」へと紡がれている……。

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