藤沢周平著「必死剣鳥刺し」を読んだ。
絶体絶命のときにのみ使われる必死剣鳥刺し。この技が繰り出されるとき、その使い手は半ば死んでいる。
お気に入り度:
★★★★「
隠し剣孤影抄」に収録された作品。
以前「
隠し剣孤影抄」に収録されている作品を、いくつかピックアップして書評は書いていたが、『必死剣鳥刺し』は取り上げていなかった。
そこに、
2010年7月10日から豊川悦司主演の映画が公開されるのを知って、これを機に、原作の書評を書いておく。
いずれこの映画も見ると思うので、その比較にもなるだろう。
あらすじ
兼見三左ェ門は、打ち首覚悟で禍の根であった藩主の愛妾を殺した。
しかし、その処分は軽く、一年で閉門が解かれ、その二ヶ月後、近習頭取への沙汰を受けた。にも関わらず、三左ェ門を見る藩主の目は冷たい。
そこに三左ェ門を近習頭取を推した中老津田民部から、家老で藩主血縁の帯屋隼人正が藩主を狙っているという話を聞かされる。
津田は、天心独名流の剣の腕と必死剣鳥刺しで、殿を守れと言った。
* * *
三左ェ門の家には、兼見家に来て五年になる姪の里尾がいる。
一度は嫁いだものの、虐待されたあげく離縁になっていた里尾は、弟が当主となった実家には居づらく、三左ェ門の妻の看病のために兼見家を訪れ、妻の死後も家事を続けることで、兼見家に居場所を見つけたようだった。
五年もの間、里尾に甘えてしまった三左ェ門は、彼女の縁談を進めようとするが、里尾は三左ェ門と一緒にいたいと言う。
書評
悲しく切ない物語である。
三左ェ門の不運と、里尾の不幸を描いているこの作品は、たった一つ描かれている光のかけらが、二人の闇をいっそう濃いものに感じさせる。
この作品の見所は、藩主の愛妾を殺したが寛大な処分を受けた三左ェ門を待ち受けている事件と、兼見家に居場所を見つけた里尾の思いだろう。
短いが巧みに描かれた里尾の境遇が絶妙で、無口となった里尾の心に沈む悲しみと、兼見家に居場所を見つけた姿が、痛々しく感じられる。
そして寛大な処分の裏にある企みに気づいた三左ェ門の失意と、彼を待つ里尾の姿が胸を切なくさせる。
悲劇の物語であるこの原作を、映画ではどのように創りあげているか、非常に興味があるところ。
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映画「必死剣鳥刺し」公式サイト