11月5日(土)にテレビ朝日で放送された、宮部みゆき著『火車』原作のテレビドラマ『火車』の感想です。
全体的な感想は、可もなく不可もなく。
あの原作を二時間にまとめると、どうしても原作に覚えた感動が薄まっている、という印象でした。
物語の流れは、ほぼ原作に忠実。
休職中の刑事・本間俊介は、遠縁の男性から、失踪した婚約者・関根彰子の捜索を個人的に頼まれた。
その足取りをたどる中で、彼女は関根彰子という女性の戸籍を乗っ取っていた、別人であることが明らかとなる。
「いったい彼女は何者なのか。そして本物の関根彰子は?」
本間は二人の接点を探して奔走する。
この物語の見所は、上記あらすじの関根彰子はいったい誰なのか、というものです。
原作では、その見所に加え、偽物の関根彰子に課せられた苛酷すぎる人生の無情さに、同情心が溢れて止まりませんでした。
むしろ、原作の見所は、他人の戸籍を乗っ取らざるをえないほど追いつめられた、彼女の苛酷な運命にあるように思えます。
残念ながら、テレビドラマでは、ここのところの描写が弱く、今ひとつ彼女への同情心が湧いてきませんでした。
原作では、彼女は最後までまったく姿を現しません。
本間が偽物の関根彰子を足取りを追い、聞き込みをしていく過程で、彼女の凄惨な人生が徐々に明らかになることで、読む者に深く積み重なっていき、生身の偽物関根彰子像ができあがっていきます。
「テレビドラマでは、どのように描いて偽物の関根彰子を作り上げていくのか」
ということが一番気になっていたのですが、時間が足りず偽物関根彰子を描ききれなかったという印象が残りました。
細かいことを言うと、本物の関根彰子を小学校の校庭に埋めたことに疑問が残ります。
女性一人で、どうやって遺体をあそこまで運んで埋めたのか。見つかる危険だって高いのに。
原作では、小学校の校庭には遺体を埋めていないのです。どうしてこんな設定にしたんだろう?
それでも、制作者の妙な解釈は入れられておらず、好感の持てるドラマでした。
このドラマを気に入った方なら、原作はもっと楽しめると思います。
ちなみに『火車』は、私が初めて読んだ宮部みゆきの著書で、これをきっかけにミステリーと宮部作品にはまりました。
私が『火車』を読んで十年ちかく経ったかなぁ。これを機会にもう一度読み直して見よう。
おすすめの作品です。